今年も東京国際映画祭が、10月18日から開催される。同映画祭は、昨年から中東映画に力を入れ始めているが、今年も10本が上映される充実ぶりだ。とはいえ、テヘラン在住の身としては、映画祭鑑賞は不可能だ。残念。まあ、ここでイラン映画をたっぷり見ろ、ということか。
ユーセフ・シャヒーン監督(写真)の「カイロ中央駅」も上映される。今年7月末に82歳で死去したエジプト映画の巨匠の代表作の一つ。同作は、国際交流基金主催の2007年アラブ映画祭でも上映されたが、筆者は、残念ながらみていない。
シャヒーン監督といえば、自伝的作品「アレキサンドリア WHY?」が代表作。日本で「炎のアンダルシア」が劇場公開された1998年に来日した。一緒に、エジプトのスター歌手で同作に吟遊詩人役として出演したムハンマド・ムニールや、エジプト若手人気俳優ハニー・サラマもやってきて、記者会見では、あのムハンマド・ムニールが、挿入歌の歌と踊りを披露したものの、列席の日本人の反応が極めて悪かったため、ムニールが、踊りの後、寂しそうな顔をしていたのが、思い出される。
シャヒーン監督来日の際、通訳を務めたのが、NHKテレビ「アラビア語会話」で講師を務めた師岡カリーマさんだ。「1950年代以降のエジプト映画を牽引してきた。オマル・シャリーフ(「アラビアのロレンス」などで知られるエジプト出身俳優)を見いだしたのも彼。存在は大きかった」。カリーマさんは、シャヒーンの訃報に接して、こう語る。
だが、一方で、世のシャヒーン評価について、カリーマさんは「イスラム原理主義と戦う、という側面が強調されすぎだった」と冷静な見方をする。確かに「炎のアンダルシア」など、イスラム原理主義を暗に批判した作品もあったが、キリスト教徒のエジプト人として、「アレクサンドリア3部作」で描かれたような、王制時代の世俗的空気の中で育ったシャヒーンには、「あらゆる宗教的なものを否定する傾向」があったのであり、特にイスラム原理主義批判を行っていたわけではない、というのが、カリーマさんの見方のようだ。
鑑賞していないので、断言できないが、シャヒーンの初期の作品にあたる「カイロ中央駅」にも、そうした政治的なメッセージはないはずだ。「炎のアンダルシア」にしても、イスラムの側による「焚書」を批判的に描いてはいるが、随所に盛り込まれるムハンマド・ムニールなどの歌や踊りなど、エンターテイメント的要素も色濃い。
政治的なメッセージから、娯楽的要素まで盛りだくさんに詰め込むのがシャヒーン流とも言える。カリーマさんによると、シャヒーンは「若者のために映画を作っているのに、若者たちは映画を見ようとしない」と不満を漏らしていたという。
そうした感情から発したシャヒーン監督の「力み」が、よくも悪くも、ぎっしり中身が詰まった感のある作品を生み出したのかも知れない。
今映画祭の中東関連では、ほかにレバノンの「キャラメル」も注目作。監督は、レバノンが生んだ現代アラブの歌姫ナンシー・アジュラムのビデオ・クリップ監督でも知られるナディーン・ラバキ。ちなみに、ナディーン・ラバキは、以前、このブログでも紹介したレバノン映画「ボスタ」に「アリア」役てで出演している。「ボスタ」は、アラブ映画祭2008で上映されている。

ユーセフ・シャヒーン監督(写真)の「カイロ中央駅」も上映される。今年7月末に82歳で死去したエジプト映画の巨匠の代表作の一つ。同作は、国際交流基金主催の2007年アラブ映画祭でも上映されたが、筆者は、残念ながらみていない。
シャヒーン監督といえば、自伝的作品「アレキサンドリア WHY?」が代表作。日本で「炎のアンダルシア」が劇場公開された1998年に来日した。一緒に、エジプトのスター歌手で同作に吟遊詩人役として出演したムハンマド・ムニールや、エジプト若手人気俳優ハニー・サラマもやってきて、記者会見では、あのムハンマド・ムニールが、挿入歌の歌と踊りを披露したものの、列席の日本人の反応が極めて悪かったため、ムニールが、踊りの後、寂しそうな顔をしていたのが、思い出される。
シャヒーン監督来日の際、通訳を務めたのが、NHKテレビ「アラビア語会話」で講師を務めた師岡カリーマさんだ。「1950年代以降のエジプト映画を牽引してきた。オマル・シャリーフ(「アラビアのロレンス」などで知られるエジプト出身俳優)を見いだしたのも彼。存在は大きかった」。カリーマさんは、シャヒーンの訃報に接して、こう語る。
だが、一方で、世のシャヒーン評価について、カリーマさんは「イスラム原理主義と戦う、という側面が強調されすぎだった」と冷静な見方をする。確かに「炎のアンダルシア」など、イスラム原理主義を暗に批判した作品もあったが、キリスト教徒のエジプト人として、「アレクサンドリア3部作」で描かれたような、王制時代の世俗的空気の中で育ったシャヒーンには、「あらゆる宗教的なものを否定する傾向」があったのであり、特にイスラム原理主義批判を行っていたわけではない、というのが、カリーマさんの見方のようだ。
鑑賞していないので、断言できないが、シャヒーンの初期の作品にあたる「カイロ中央駅」にも、そうした政治的なメッセージはないはずだ。「炎のアンダルシア」にしても、イスラムの側による「焚書」を批判的に描いてはいるが、随所に盛り込まれるムハンマド・ムニールなどの歌や踊りなど、エンターテイメント的要素も色濃い。
政治的なメッセージから、娯楽的要素まで盛りだくさんに詰め込むのがシャヒーン流とも言える。カリーマさんによると、シャヒーンは「若者のために映画を作っているのに、若者たちは映画を見ようとしない」と不満を漏らしていたという。
そうした感情から発したシャヒーン監督の「力み」が、よくも悪くも、ぎっしり中身が詰まった感のある作品を生み出したのかも知れない。
今映画祭の中東関連では、ほかにレバノンの「キャラメル」も注目作。監督は、レバノンが生んだ現代アラブの歌姫ナンシー・アジュラムのビデオ・クリップ監督でも知られるナディーン・ラバキ。ちなみに、ナディーン・ラバキは、以前、このブログでも紹介したレバノン映画「ボスタ」に「アリア」役てで出演している。「ボスタ」は、アラブ映画祭2008で上映されている。

