2008年5月アーカイブ

アラブ音楽ライブをひんぱん開催していると、噂には聞いていた、東京・西荻窪のライブハウス「音や金時」に初めて行った。
先日、カフェバグダッド・イベントのゲストとして、師岡カリーマさんとのセッションに登場いただいた、ウード奏者、常味裕司さん率いる「ファルハ」のライブがあると聞いたからだ。
構成メンバーに若干の変更があったりするようだが、今回は、常味さんのほか、海沼正利(カーヌーン)、平松加奈(バイオリン)、西田ひろみ(バイオリン)、大坪寛彦(コントラバス)、和田 啓(レック)の各氏が加わった。エジプト在住経験がある西田さんは、今回が初参加とのこと。和田啓さんは、常味さんとの共演CDも出している著名なパーカッショニスト。海沼さん(写真に写っていなくてごめんなさい・・・)は、ダルブッカなど打楽器奏者だが、「趣味」で、複雑なカーヌーンも演奏するという奇才。平松さんは、スパニッシュ・コネクションという「フラメンコ・ジャズ」のユニットでも活躍しているようだ。
また、「ファルハ」より、構成メンバーが少ない、「ヒラール」という小ぶりのユニットもあるらしい。

ライブハウスなるものにほとんど足を運んだことがないこともあり、演奏者と観客の距離の近い独特の雰囲気に圧倒された。酒を飲みつつ、ゆったりとアラブ音楽を聞くことができる機会をこれまで逃していたことを、少し悔いた。去年の年末にやはりここで行われたライブは、地べた座りも出るほどの超満員だったようだが、今回は、席の7割程度の入りで、適度な感じだった。
前半が7曲、後半がアンコールを含め6曲。
前半には、ムハンマド・アブデルワッハーブ作曲の「ビント・エルバラド」「永遠なるナイル」「エル・ママリク」「ファルハ」「レバノンの夜」「アルジェリアの夜」など。
後半は、「ボルボル」「昼も夜も」「クル・ダ・カン・レ」など。アンコールは、歌手の松本泰子さんが飛び入りして、「夜、ジャスミンの木の下で」というチュニジアの曲を歌った。
松本さんは、最近、ウンム・クルスームの曲を歌うことで、名前が知られつつある。ご自身にうかがったところ、ウンム・クルスームの曲の現在の持ち歌は、「エンタ・オムリ」とのこと。ぜひ、聞いてみたいものだ。


イギリス映画の巨匠、ケン・ローチ監督の新作は、「弱者が弱者を搾取する」という、なんともやりきれない現実を描いた「この自由な世界で」。渋谷のシネカノンでの試写会で鑑賞。映画評論家で、明治学院大教授の四方田犬彦氏の姿も。

公式サイト

ロンドンを舞台に外国人労働者の派遣業に乗り出すひとりの女性が主人公。シングルマザーで、複雑な年頃を迎えた息子の問題も抱える。自らが生活するために、ポーランドやウクライナなどから来る外国人労働者を「食い物」にする。まさに「搾取される者が搾取する構図」。多分、今や万国共通の構図だ。

ケン・ローチ作品のすごさは、そのディテールの描写に対する誠実さだ。
たとえば、作品に登場するイラン人・マフムードの人物設定。出版業を営んでいた父が王制時代の1950年代に、石油の国有化を宣言した「ムサッデク首相を支持した」かどで、逮捕されたほか、イラン革命後には、マフムード本人が、現イスラム革命政権から、「反体制の本を出版した」として自らも逮捕された、というもの。この、予備知識がないと、かなりわかりにくい設定には、イランの現イスラム革命体制だけが、言論の自由を抑圧しているわけではない、というメッセージだ。

イスラムに対する無自覚な批判を避けようとする、自覚的な人物設定と思われる。

また、ケン・ローチ作品に通底するものだが、主人公アンジーの描き方からしても、善悪を簡単に決めつけない、ケン・ローチの、表現者として、非常に謙虚な態度が改めてみてとれた。

ケン・ローチ作品については、拙ブログのこの記事も参照。


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